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診療報酬引き上げは「慎重に議論」~財政審が建議でマイナス改定を提言
財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は5月29日、「歴史的転機における財政」と題した建議を取りまとめ、鈴木俊一財務相に提出した。岸田文雄内閣が最重要課題と位置づける少子化対策については「国家の命運を左右する取組」としたうえで、「医療・介護など社会保障分野の歳出改革を断行するとともに、企業を含め社会・経済の参加者全員が公平な立場で広く負担する新たな枠組みを検討していかねばならない」と提言。来年度の診療報酬および介護報酬の同時改定については「引き上げの必要性について慎重に議論を行うべき」とマイナス改定を促す表現も盛り込んだ。この時期の建議は、国の政策方針となっている「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案となることが通例であるため、次期診療報酬改定で大幅なプラス改定は望めない状況となったといえよう。
人口減少社会に突入した日本では、少子化と高齢化が同時に進んでいる。とりわけ重要な分岐点となるのが、いわゆる団塊の世代が全員75歳以上となる2025年だ。政府はここを社会保障改革の目標年度とし、「能力に応じて負担し、必要に応じて給付」する持続可能な仕組みとして、「全世代型社会保障」を目指してきた。しかし、財政審は「こうした考え方が実現していない部分がまだまだ残されている」とし、「改革を断行するには事実上本年がラストチャンス」「医療・介護の改革議論を加速する必要がある」とした。槍玉にあげたのは診療報酬・介護報酬だ。「仮に」と前置きしつつ「診療報酬・介護報酬を1%引き上げると2,500億円程度の公費、3,000億円程度の保険料が増加する」と言及。「少子化対策で新たな財政需要が生じる中、年末の改定に向けては、巨額のコロナ補助金もあり積み上がった資産の状況も含めて」慎重に議論すべきとした。なお、「巨額」と踏み込んだ表現をしたコロナ補助金については、その恩恵で病院の純資産が増加していると指摘。病院の水道光熱費の高騰が問題となっているが、「賃金・物価高への対応においては、こうした資産を活用していくべき」と斬り捨てている。
医療提供体制の見直しについては、さらなる機能分化の推進と地域偏在の解消を提言。偏在解消については、「外来医師多数区域」で新規開業希望者に対し不足する医療機能を担うよう要請していることを、より強化すべきだとしている。要請に従っているのが7割程度という現状があるためで、ドイツやフランスの例を踏まえ「もう一歩踏み込んだ規制が必要」と明記した。今後、診療所の新規開業にあたって診療科目の自由度が狭まる可能性が高い。少なくとも、周辺の医療機関の状況を従来以上に細かくリサーチする必要が生じるのではないか。
看護師確保へ30年前の指針を初改定 ~看護ニーズ変化や感染症対策も見据え
厚生労働省は5月29日、医道審議会保健師助産師看護師分科会の「看護師等確保基本指針検討部会」の初会合を開催。今後の看護ニーズの増大を見据え、看護師確保の推進のため「看護師等の確保を促進するための措置に関する基本的な指針」(以下、看護師等確保基本指針)を初めて改定する方針を示した。少子高齢化による生産年齢人口の減少だけでなく、コロナ禍で新規感染症の発生に備えた看護師確保の必要性が高まったことも背景にありそうだ。
看護師等確保基本指針は、1992年に制定された「看護師等の人材確保の促進に関する法律」に伴って制定された。それから約30年、この法律および看護師等確保基本指針は一定の効果をあげてきている。1990年の看護職員(看護師、准看護師、保健師、助産師)就業者数は83.4万人だったが、右肩上がりに増えて2020年には173.4万人となった。他方で、時代の変化に伴い、看護師を取り巻く環境も大きく変わってきた。2001年の保健師助産師看護師法の改正で「看護婦」が「看護師」となったほか、近年の在宅医療の増加により、訪問看護のニーズも高まっている。30年前の看護師等確保基本指針では通じない部分が増えているのはむしろ当然といえよう。
そこで厚労省は、指針改定の方向性として「看護師等の就業」「看護師等の養成」「病院等に勤務する看護師等の処遇の改善」「研修等による看護師等の資質の向上」「看護師等の就業の促進」「新興感染症等への対応に係る看護師等(看護職員)の確保」「その他看護師等(看護職員)の確保の促進に関する重要事項」の7つを提示した。「病院等に勤務する看護師等の処遇の改善」では、夜勤など業務負担の軽減、給与水準、看護業務の効率・生産性向上、勤務環境の改善などを挙げた。夜勤については、日本看護協会が実施した2022年の調査結果を提示。それによれば、「病棟に勤務する看護職員の34.3%が1カ月の夜勤時間数が72時間以上」となっており、厚労省は「看護職員の就業継続の支援に当たっては、夜勤等の業務負担の軽減を図っていくことが重要」と明記している。また、資料では「看護職員夜間配置加算」など診療報酬での評価も一覧表で示したほか、看護職員等処遇改善事業補助金や看護職員処遇改善評価料についても紹介。評価をさらに手厚くすることで、看護師確保を推進していく意向をにじませている。なお、医道審議会の委員でもある日本看護協会会長の福井トシ子氏は、「基本指針が30年を経て改定されるのは感慨深い」としたうえで、「本格的に(人材が)逼迫する前に、早急に看護師等確保を進めることが重要。専門性の向上も極めて重要で、養成課程やスキルアップ支援のさらなる充実が強く求められる」と指摘。処遇改善と資質の向上を両輪で進める必要性を強く訴えたことが、どこまで改定指針に反映されるか注目したい。
特定行為研修制度、運用改善・拡充検討へ
政府の規制改革推進会議は1日、医療や介護など分野ごとの規制緩和策やそれらの実施時期を盛り込んだ答申をまとめた。医療では、医師がカバーする在宅医療の業務で看護師への移管(タスク・シフト)を促すため、2015年に始まった特定行為研修を看護師が受けやすくしたり研修の領域を拡大したりすることの検討を求めた。医師から看護師へのタスク・シフトの推進策として、日本看護協会は、高度な専門知識を身に付けた看護師が医師の指示なしに一定の診断や治療を行う「ナース・プラクティショナー制度」(NP)の創設を主張しているが、答申では方向性を示さなかった。今回の答申に盛り込まれた医療の規制緩和は、以下などが柱になっている。
▼医療従事者間でのタスク・シフトの推進▼医療データの利活用促進▼地域が抱える課題解決に向けた取り組み▼AI(人工知能)など新たな技術を活用するための環境整備
それらのうちタスク・シフトの推進では、特定行為研修制度へのてこ入れを検討するよう厚生労働省に求めた。厚労省は、研修を受ける看護師や現場の負担を減らすため、日常業務の空き時間を使って長期間の研修を受けたりオンラインの研修を活用したりできないか、2023年度中に検討を始め、遅くても24年度に措置する。また、看護師が特定行為を行うのに必要な医師の手順書の発行を円滑にするため、医師の理解を促したり手順書の様式を見直したりする。厚労省の研究班が20年度に行った調査では、特定行為研修の受講中に感じた困難なこととして、1,364人の51.9%が「仕事との両立が難しい」を挙げ、「ほかの職員・スタッフの業務負担が増加する」(40.8%)や、「受講の費用負担が掛かる」(32.5%)も多かった。一方、特定行為研修の拡大は、在宅など地域医療の領域を想定している。24年度に検討を始め、25年度に結論を出すよう厚労省に求めた。それに先立ち同省は、地域での医療ニーズを医師や看護師から23年度中に把握する。また、最適なタイミングで医療をできず在宅療養の患者に不利益が生じるケースの状況などを24-25年度に調査し、タスク・シフトのさらなる推進策を検討する。
答申では、医療・介護・保育分野を扱う有料職業紹介事業者に支払う手数料の負担が問題視されていることから、3分野を扱う事業者に対する集中的指導監督を実施することや、短期間で離職した場合での相当額の手数料の返還を検討することなどを盛り込んだ。答申では、以下などの検討を求めている。
▼医療・介護・保育分野での有料職業紹介事業などの制度の見直し▼外国人在留資格「特定技能 1 号」「特定技能 2 号」の対象分野の追加▼介護サービスでの人員配置基準の見直し▼介護事業所などによる「科学的介護情報システム」(LIFE)への入力負担軽減に向けた重複項目の解消や、あいまいな入力項目の定義の明確化
このうち有料職業紹介事業については、3分野での人手不足を背景に、求人者が紹介事業者に支払う手数料の高額化やいわゆる「お祝い金」の問題が指摘されていることから、2023年度中に紹介事業者への集中指導監督を実施するとした。(以降、続く)
少子化対策、財源確保へ…社会保障改革
岸田文雄首相は1日、「こども未来戦略会議」で、少子化対策に必要な財源を確保するため、歳出改革を徹底させる考えを示した。政府は、それによってカバーし切れない財源を新たな支援金を創設して確保する方針。社会保障の制度改革や歳出の見直し、既定予算の活用などによって社会保険の負担を抑え、実質的に追加負担を生じさせないことを目指す。年末の予算編成過程で正式決定する方針で、社会保障の制度改革や歳出の見直し、既定予算の活用などのメニューを盛り込んだ改革工程表を作る。政府はこの日の会合で、2024年度から3年間に集中して取り組む「こども・子育て支援加速化プラン」の具体策や、そのための財源の確保策などを盛り込んだ「こども未来戦略方針」の素案を示した。出産に伴う経済的な負担を軽減するため、出産費用(正常分娩)の保険適用を検討する方針を明記した。出産育児一時金を4月に従来の42万円から50万円に引き上げた効果を見極めるため、政府は出産費用の「見える化」を24年度に始める方針。それによる検証を踏まえ、26年度をめどに保険適用を検討する。加速化プラン全体の予算規模には3兆円台半ばを想定している。政府は、財源を確保するため社会保障などの歳出改革の徹底や既定予算の活用などにまず取り組み、カバーし切れない財源を新たな支援金で賄う方針だ。それによって、実質的に追加負担を生じさせないことを目指す。素案では、少子化対策の財源を確保するために消費税を含む新たな税負担は「考えない」と明記した。社会保障の制度改革や歳出の見直し、既定予算の活用などのメニューを改革工程表に盛り込む。
医療施設動態調査
● 病院の施設数は前月に比べ 3施設の減少、病床数は 631床の減少。● 一般診療所の施設数は 97施設の減少、病床数は 280床の減少。● 歯科診療所の施設数は 113施設の減少、病床数は 増減なし。
新型コロナ 5類以降後の対策 ~①移行後は自主的な取り組みによる対応へ
政府は、令和2年初頭、世界中で拡大し始めた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)を令和2年2月に「指定感染症」と「検疫感染症」に指定する政令を施行しました。同年3月には「新型インフルエンザ等対策特別措置法」(特措法)の対象疾患となり、令和3年2月の法改正では「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」に位置づけました。その後、世界中で拡大したオミクロン株は従来株と比べて重症化率が低い傾向にあったことや、オミクロン株対応のワクチン接種が始まったことなどを受け、対策の緩和が進み、令和5年5月8日以降、新型コロナの感染症法上の位置づけを5類へ変更しました。これにより、これまでの「法律に基づき行政が様々な要請・関与をしていく仕組み」から、「個人の選択を尊重し、国民の自主的な取り組みをベースとした対応」に変わりました。
厚生科学審議会感染症部会での最終確認において、「全国の新規感染者数は、令和5年1月27日以降、減少傾向が続いた後下げ止まり、足元では増加傾向となっている。夏に向けて、一定程度の感染拡大を想定する必要があるが、病原性が大きく異なる変異株の発生など、科学的前提が変わるような特段の事情は生じていない。」としたことから、現在の新型コロナウイルス感染症法における「新型インフルエンザ等感染症(2類相当)」には該当せず、令和5年5月8日以降は、「5類感染症」に分類することとしました。
新型コロナ 5類以降後の対策 ~②感染対策・療養期間の考え方
(1)5類移行後の基本的な感染対策
感染症法上の位置づけの変更により、基本的対処方針や業種別ガイドラインは廃止となります。日常における基本的感染対策については、政府として一律な対応を求めず、個人や事業者(以下、医療機関)の判断に委ねることを基本とし、自主的な感染対策に取り組むよう呼び掛けています。また、政府は医療機関の判断に資するような情報の提供を行うとし、特定感染症予防指針の策定については、位置づけ変更後の患者の発生動向等の把握の仕組みや医療提供体制の移行状況等を勘案して、検討するとしています。各医療機関については、自主的に情報収集と検討をした上で、自院に合った感染対策に取り組む必要があります。
(2)基本的感染対策の実施にあたっての考え方
政府は、新型コロナの特徴を踏まえた基本的感染対策として、引き続き、手洗い等の手指衛生や換気が有効であることなど、以下の内容を示しています。
新型コロナ 5類以降後の対策 ~③幅広い医療提供体制と健康保険適用へ
医療提供体制について、入院措置を原則とした限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な通常の対応になります。位置付け変更後は季節性インフルエンザ等と同様に、医療費等は健康保険が適用され、1割から3割の自己負担が基本となります。政府は、急激な負担の増加が生じないよう、入院・外来の医療費の自己負担分に係る一定の公費支援の期限を区切って継続することとしています。政府は、幅広い医療機関で新型コロナの患者が受診できる医療体制に向けて、必要となる感染対策や準備を講じつつ段階的に移行を進めていく考えです。
厚生労働省は、新型コロナの患者・疑い患者を診療する場合の感染対策の例として、防護服については、サージカルマスク、フェイスシールド、手袋を基本とし、ガウンは必要時のみ装着することを推奨しています。外来でのゾーニングについては、診察・検体採取時の工夫例として、パーティションによる簡易な分離、空き部屋等を活用するなど、学会等の感染対策ガイドラインに沿いつつ、効率性も考慮した対応を呼びかけています。
新型コロナ 5類以降後の対策 ~④診療報酬見直しを踏まえた自院の対策ポイント
新型コロナに係る医師等の応招義務については、緊急対応が必要であるか否かなど、個々の事情を総合的に勘案する必要があります。その上で、患者が発熱や上気道症状を有している又は新型コロナに罹患している、若しくはその疑いがあるということのみを理由に、当該患者の診療を拒否することは、応招義務を定めた医師法(昭和23年法律第201号)第19条第1項及び歯科医師法(昭和23年法律第202号)第19条第1項における診療を拒否する「正当な事由」に該当しないため、発熱等の症状を有する患者を受け入れるための適切な準備を行うこととし、それでもなお診療が困難な場合には、少なくとも診療可能な医療機関への受診を適切に勧奨する必要があります。
政府は、オンライン診療の実施にあたって、令和4年1月以降、初診から「オンライン診療の適切な実施に関する指針」のルールに沿ってオンライン診療を実施することが可能となっており、指針のルールに従ったオンライン診療を実施する体制の整備を呼び掛けています。新型コロナの時限的・特例的な取扱いに基づく電話・オンライン診療の報酬上の取扱いは、令和5年7月31日をもって終了となるため、注意が必要です。
オンライン服薬指導の実施にあたっても同様に、新型コロナの感染拡大を踏まえた時限的・特例的な取扱いに基づく電話による服薬指導は、位置づけ変更後も一定期間継続されますが、診療報酬上の取扱いについては、令和5年7月31日をもって終了しますので、情報通信機器を用いた服薬指導を検討する必要があります。
医院を取り巻くリスク ~医療機関をとりまくリスクとはどのようなもの?
医業経営活動に影響を与えるリスクには、次のようなものが挙げられます。
(1)組織体制リスク
病医院組織は、職員の大部分が医療関連の有資格者で構成されている一方、その職種別に部門が設けられ、これらが相互に協力・連携することにより業務を遂行するという特殊性があります。そのため、部門間の価値観の相違や意思疎通の困難さが、しばしば問題になるケースがあります。
●組織硬直化●セクショナリズム ・・・等
(2)経営リスク
●経営戦略の失敗●事業計画の破綻●マスコミ対応の失敗●病院イメージ戦略の失敗 ●中期経営計画や年度経営計画策定の失敗・・・等
(3)医療事務リスク
●医療行為上の過誤●業務効率性の低下●重要書類の紛失●コンプライアンス意識の欠如 ・・・等
(4)経営管理リスク
●医療安全管理システムの不適応、または不存在●患者管理の失敗●不正経理●各種業務管理(医事、購買、在庫等)体制の未整備●財務的破綻 ・・・等
(5)経営資源リスク
●設備の故障・事故、老朽化●人材登用の失敗●従業員(医師を含む)の不祥事●従業員モラル(士気)の低下●労働災害による死傷者●セクハラ訴訟 ・・・等
(6)医療技術
●環境リスク●新薬採用による副作用の出現●最新医療技術の開発と採用●医療廃棄物による水質・土壌汚染 ・・・等
(7)社会的リスク
●医療制度改革●従来からの慣行の問題化●犯罪組織の介入●内部告発 ・・・等
医療安全管理体制と診療報酬
具体的な医療安全管理体制の基準は、下記のように定められています。
医療安全管理委員会の連携のもと、院内の医療安全確保のため、業務改善等に取り組むなどの対策を実施している医療機関を評価するものとして、「医療安全対策加算」があり、算定には、下記の項目について整備することが求められています。