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個人所得課税の改正

 令和8年度の個人所得課税は、物価高への対応や成長投資の促進、税負担の公平性確保を柱とした、近年でも大きな改正となりました。中でも目玉となるのは、自由民主党、公明党、国民民主党の間で交わされた3党合意にも盛り込まれている年収の壁の引き上げです。この実現に向けて、所得税の基礎控除と給与所得控除が大きく引き上げられることになりました。また、物価高への対応として住宅ローン控除やNISA制度が拡充されるほか、「格差是正」の観点から、極めて高い水準の所得に対する税負担が見直されます。

1.物価上昇局面における基礎控除等の対応

(1)改正の背景

 所得税の基礎控除は一定の金額に固定されており、現在のような物価上昇局面では、控除の実質的な価値が目減りしてしまうという課題があります。この課題を解決するため、今回の改正では物価の上昇に連動して基礎控除等の額を見直す仕組みが新たに創設されます。
また、2024年12月に自由民主党、公明党、国民民主党の間で交わされた3党合意には、所得税の負担開始水準、いわゆる年収の壁を178万円とすることが盛り込まれました。今回の改正では、この3党合意を実現するため、所得税の基礎控除と給与所得控除が引き上げられることになりました。

(2)改正の概要

①基礎控除の引き上げ

 物価高により控除額の実質的な価値が目減りしてしまうことに対応するため、「物価の上昇に連動して基礎控除等の額を見直す仕組み」が導入されます。

【物価の上昇に連動して基礎控除等の額を見直す仕組み】

● 基礎控除の本則部分については、見直し前の控除額に、税制改正時における直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗ずることで調整する。
● 給与所得控除の最低保障額についても、基礎控除の本則と同様の措置を講ずる。
● 源泉徴収義務者等の事務負担に配慮し、見直しの結果、控除額に端数が生ずる場合には万円単位で調整するとともに、見直し初年は、月次の源泉徴収等では対応せず年末調整からの対応とする。

 この改正により、令和8年分及び令和9年分の基礎控除については、直近2年間の消費者物価指数の上昇率が6.0%であったことを踏まえ、合計所得金額が2,350万円以下である個人の本則部分が4万円引き上げられ、62万円になります。
また、令和7年度税制改正により、合計所得金額に応じて基礎控除が5〜37万円加算される特例措置が設けられていますが、この特例部分についても、令和8年及び9年分については、合計所得金額132万円以下の場合の37万円が5万円引き上げられ42万円に、合計所得金額489万円以下の場合も一律42万円に引き上げられます。

【基礎控除額(改正前・改正案)】※色付きの部分が、今回の改正部分

(「令和8年度税制改正大綱」の内容をもとに作成)

 上図の通り、令和8年、9年の合計所得金額がそれぞれ489万円以下の場合、基礎控除額は「62万円(本則)+42万円(特例)」の104万円となります。

②給与所得控除の引き上げ

 足元の物価高に対応するため、また、所得税の負担開始水準、いわゆる年収の壁を178万円へと引き上げるため、すべての給与所得者が受けられる給与所得控除の最低保障額が4万円引き上げられます。さらに、令和8年及び令和9年分については、最低保障額が更に5万円引き上げられ74万円になります。

2.住宅ローン控除の見直し

(1)改正の背景

 本格的な人口減少や、カーボンニュートラルの実現といった中長期的な社会構造の変化を背景に、従来の「新築中心」から「既存住宅の利活用」と「住宅の質の向上」を重視する方向への転換が求められています。特に、既存住宅ストックの有効活用を進めるためには、省エネ性能の高い住宅の取得・改修を促進することが不可欠であり、住宅取得に係る税制上の支援についても、こうした政策目的と整合的な見直しが必要とされてきました。
 また、少子化の進行や世帯規模の縮小により、住宅に求められる規模や形態が多様化していることから、床面積要件などの制度設計についても、実態に即した柔軟な対応が求められています。
 これらの課題を踏まえ、住宅ローン控除については、制度の適用期限を延長した上で、制度の見直しが行われることになりました。

(2)改正の概要

 住宅ローン控除の適用期限が、現在の令和7年12月31日から令和12年12月31日まで5年延長され、住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率及び控除期間が次のように見直されます。

(注1) 令和9年12月31日以前に建築確認を受けた場合又は令和10年6月30日以前に建築された場合に限り、借入限度額は2,000万円、控除期間は10年とする。
(注2) 「その他の住宅」は、省エネ基準を満たさない住宅のことを指す。
(注3) 開発・建築行為に規制が講じられている、土砂災害特別警戒区域、地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、浸水被害防止区域、災害危険区域(都市再生法に基づく勧告に従わないものとして公表の対象となった区域のみ)。
(注4) 所得税額から控除しきれない額については、所得税の課税総所得金額の5%等(最高9.75万円)の範囲内で個人住民税から控除する。

 従来、既存住宅は新築住宅に比べて借入限度額や控除期間が低く押さえられてきましたが、今回の改正により、大幅に拡充されます。

3.NISAの拡充

(1)改正の背景

 NISAは、令和5年度税制改正で抜本的に拡充・恒久化され、既に老後に備えた十分な資産形成が可能になっていますが、対象年齢は18歳以上とされていました。そこで今回、次世代の資産形成を支援する観点から、いわゆる「こどもNISA」制度が創設されることになりました。

(2)改正の概要

 NISAについて、次の措置が講じられます。

①対象年齢の拡大

 次世代の資産形成を支援するため、これまで18歳以上とされていたつみたて投資枠の対象年齢が、0歳まで拡大されます。

● 投資枠の設定:子(0~17歳)のための「未成年者特定累積投資勘定」が新設されます。
● 投資限度額:年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は合計600万円に設定されます。
● 成人の制度への移行:子が18歳に達した際、18歳以上向けの現行制度へと移行します。

②未成年者口座の払出し制限と例外規定

 格差の固定化を防止し、長期・安定的な投資を促す観点から、原則として18歳になるまで払出しに制限が設けられますが、以下の例外があります。

● 12歳以降の払出し:子が12歳に達した後は、大学進学や生活費などの特定事由に限り、子の同意を得た上で親権者等による払出しが可能となります。
● 災害時等の特例:災害により家屋が全壊した場合などは、年齢に関わらず全額の払出しが認められます。

③対象商品の拡充

 幅広い世代の運用ニーズに応え、国内経済への投資を後押しするため、つみたて投資枠の対象となる投資信託の範囲が広がります。

● 一定の要件を満たす国内株式指数の追加:国内市場を対象とした一定の株式指数(読売株価指数、JPXプライム150指数など)が新たに追加されます。
● 先進国・新興国指数の追加:特定の地域を対象とした先進国・新興国の株式指数単体で構成される商品も追加されます。
● 債券型投資信託の導入:債券が運用資産の50%を超える投資信託も対象に加わり、より安定的な運用を望むニーズにも対応します。

【改正後(令和9年~)の制度イメージ】

4.極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し

(1)改正の背景

 

所得税は、収入が多い人ほど税率が高くなる「累進課税」を採用しており、税負担の公平性を確
保するうえで重要な役割を担っています。令和5年度の税制改正では、非常に高い所得がある場合
でも、所得の内容によって税負担が不当に低くならないようにする仕組みが新たに導入されました。
今回の改正では、この仕組みについて、より公平な負担となるよう調整が行われます。

(2)改正の概要

 

 今回の改正では、極めて高い所得に対する追加的な税負担の計算方法が見直されます。
 具体的には、追加の税負担を計算する計算式のうち、基準所得金額から差し引く特別控除額が、現行の3.3億円から1.65億円に引き下げられます。あわせて、その控除後の金額にかかる税率が、22.5%から30%へ引き上げられます。これにより、非常に高い所得がある場合でも、所得の内容によって税負担率が大きく下がることを防ぎ、累進課税の趣旨がより実質的に確保されることになります。
 この改正は、令和9年分の所得税から適用されます。

5.青色申告特別控除の見直し

(1)改正の背景

 

 近年、取引から会計、税務申告までをデジタルデータで一貫して管理する仕組みが急速に広がっています。請求書や領収書、帳簿が電子データで保存され、あとから内容を確認できる「トレーサビリティ(追跡可能性)」が高まることで、記帳ミスや申告漏れを防ぎやすくなり、正確な申告につながると考えられています。政府としても、①正しい申告が行われやすい環境を整えること、②デジタル化を進める事業者を後押しすること――この2点を重視しており、デジタルで帳簿を管理し、電子申告を行う人ほど、税制上のメリットが大きくなるよう青色申告特別控除が見直されることになりました。
 一方、一定規模以上の事業を行っているにもかかわらず、簡易な方法で記帳し、電子申告を行っていない納税者については、青色申告特別控除の税制上のメリットが縮小されます。

(2)改正の概要

①電子申告を行う人の控除額引き上げ

 これまで55万円だった青色申告特別控除(複式簿記+書面申告)について、確定申告をe-Taxで行い、貸借対照表や損益計算書も期限内にデジタルデータで提出することを条件に、控除額が65万円に引き上げられます。これにより、「紙で申告」ではなく、「電子で期限内に申告する」ことがより強く評価される仕組みになります。

②電子帳簿を保存する納税者の控除額引き上げ

 ①の要件を満たしたうえで、さらに(1)仕訳帳や総勘定元帳を一定のルールに沿って電子保存している、(2)会計ソフトなどのシステムを使い、電子取引データも適切に保存している――などの要件を満たしている場合、控除額がさらに75万円まで引き上げられます。

③10万円の青色申告特別控除の対象者の見直し

 これまで簡易な記帳(単式簿記)でも受けることができた「10万円の青色申告特別控除」について、次のようなケースは対象外となります。

不動産所得がある人で、2年前の不動産収入が1,000万円超の場合

事業所得がある人で、2年前の事業収入が1,000万円超の場合

この改正により、事業的規模=1,000万円超の収入金額がある人は、複式簿記による記帳を行わなければ、青色申告特別控除を受けられなくなります。

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