しがそうカラム

【特別号】インボイス制度《準備編》

何を準備しなければならないのか、チェックしよう!
インボイス制度の開始までに決定し、整えておかなければならないことをまとめました。

インボイス発行事業者になるため、課税事業者へ転換する免税事業者の方へ

インボイス制度が始まる前に、何を準備しなければならないのでしょうか。ここでは、インボイスを発行する側の【売手】※1 と受ける側の【買手】※2 両方の目線から、段取りをご案内します。
※1 【売手】 とは、適格請求書発行事業者に登録した事業者を指します。
※2 【買手】 とは、仕入税額控除を適用する消費税の課税事業者を指します。(簡易課税制度を選択適用している事業者は除きます。)
まずは下のフローチャートで、準備が必要な項目を確認しましょう。

まずは何から始めよう?

【売手】としてはインボイスを発行するために、適格請求書発行事業者に登録します。
【買手】は仕入税額控除を適用するためにインボイスが必要です。取引先の登録番号の把握・管理が欠かせません。 【売手】適格請求書発行事業者に登録する
まずは適格請求書発行事業者に登録申請します※1。
令和5年3月31日までに申請すると、制度開始までに登録が間に合います。申請は、書面もしくはe-Taxで行います。
手続のご相談・ご依頼は、お気軽にお問い合わせください。 ※1 登録は任意ですが、インボイスを発行される場合は、登録が必要です。登録のご検討は、別記事「インボイス制度 課税事業者版」もしくは「インボイス制度 免税事業者版」をご覧ください。 【売手】取引先に登録番号を通知する
税務署による審査を経て登録が完了すると、登録番号が通知され、「適格請求書発行 事業者公表サイト※2」にて公表されます。登録番号を取得したら、必要な取引先に早めに通知するとよいでしょう。

インボイスを発行する際は、必ずこの登録番号を記載します。登録番号が記載されていない請求書はインボイスの要件を満たしておらず、取引先(買手)は仕入税額控除を適用することができません。売手の登録番号は買手にとって、とても重要な情報です。
事前に登録番号を通知しておくことで、取引先は「この会社にインボイスの発行を求めることができる」ということが確認できます。
また、制度開始までの準備には、取引先とすり合わせを要するものもあり、対応に時間がかかります。
早めに通知することで、準備も早くスタートできます。今後の取引や管理を円滑にするために、鍵となるアクションです。通知に際しては、文例もご活用ください。

適格請求書発行事業者の氏名又は名称、登録番号、登録年月日(登録取消・失効年月日)、法人については本店又は主たる事務所在地が確認できます。

国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト (nta.go.jp)
【買手】取引先の登録番号を集めて、管理する
買手にとって、取引先が発行するインボイスの保存は、消費税の仕入税額控除を適用するための要件となります。
発行者の登録番号は、インボイスの必要記載事項です。取引先について

  • 適格請求書発行事業者に登録したか
  • 登録した場合は、その登録番号

を確認し、制度開始に備えましょう。

また、買手が作成する仕入明細書等(一定の事項が記載されたもの)を保存することによって仕入税額控除を適用する場合にも、売手の登録番号の記載が必要となります。
収集した登録番号は、取引先台帳に登録番号の13桁と登録日を記入する欄を追加するなど、管理しやすい場所を用意されるとよいでしょう。
このとき、登録取消日、登録失効日などの記入欄もあると便利です。登録番号に期限はありませんが、今後のことを考えた場合に、取引先が登録を取り消したり、事業廃止や個人事業主の死亡などで失効したりするケースも想定されます。
これらの登録の取消・失効の情報は、取引先からの案内や問い合わせの他、「適格請求書発行事業者公表サイト」でも確認が可能です。
また、新規の取引先の場合は、基本契約書などに登録番号の記載欄を設けておくと、情報収集がスムーズです。 文例 : インボイス制度開始に伴う登録番号のお知らせとお願い
この文例は、取引先に自社の登録番号を通知すると同時に、取引先に対し、適格請求書発行事業者に登録しているかどうか(もしくは、登録予定であるかどうか)を確認し、登録した場合には、登録番号をお知らせいただくよう依頼するものです。
ここまでの流れで、誰にインボイスを発行し、誰から受け取るのか、インボイスをやりとりする取引先がリストアップできます。次のステップは、インボイスの発行・受取のための準備です。

どれをインボイスにする?保存はどうする?

【売手】としてインボイスを発行する先、【買手】としてインボイスの発行を受ける先が分かったら、次は、「どの書類をもってインボイスとするか」を決定します。
取引先と調整しながら、準備を進めます。 【売手】【買手】どれをインボイスにするのかを決める
インボイスの決定は、発行者である売手が主導することもあれば、受け取る買手が書式 を指示・依頼する場合もあります。
いずれの場合であっても、売手・買手の双方で、制度開始までに理解を深めておきましょう。 1. 取引と書類の流れを把握
まず、日頃の取引の流れと、それに伴う書類の流れを、取引先ごとに把握しましょう。
取引先との間には、契約書、見積書、注文書、納品書、請求書、支払通知書、領収書など、様々な書類が介在します。それぞれの書類の内容と、全体の流れを整理しましょう。
○整理のポイント
  1. いつ、誰が、どの書類を発行するのか?
  2. どのように売手から買手(もしくは買手から売手)に渡るのか?
  3. 社内でどう受け渡されるのか?
  4. どこに保管され、誰が管理するのか?
  5. 書類には何が記載されているのか?
2. インボイスとする書類の決定
次に、どれをインボイスとするのか決定し、書式を整えます。
1.で把握したすべての書類をインボイスに対応させる必要はありません。取引先とすり合わせ、双方で混乱が生じないよう準備しましょう。
○インボイスの選び方のポイント
インボイスには名称や形の決まりはありません。記載事項※を満たしたものであれば、インボイスとすることができます。手書きでも問題ありません。
既存の書類から、記載事項を比較的満たし、消費税に関する項目を備えているものを選び、必要に応じて改定して使用するのが、最も導入しやすい方法です。
後に解説する「発行後・受領後の社内での流れ」も視野に入れ、ご検討ください。

※インボイスの記載事項は次のとおりです。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
なお、一つの書類ですべての記載事項を満たす必要はありません。
「請求書+納品書」や「契約書+通帳」など複数の書類の組み合わせや、「書面+電子データ」の組み合わせで一つのインボイスとすることもできます。
ただしこの場合には共通番号を付すなど、紐づけた書類との関連が相互に分かるようにしておいてください。
▶端数処理は1インボイスごとに1回
インボイスには、「税率ごとに区分した消費税額等」の記載が必要ですが、その端数処理は「1インボイスにつき、税率ごとに1回」と定められています。明細行ごとに消費税額を表示している場合でも、端数処理は合計額で一括して行うようにしてください。
なお、端数処理の方法は、切上げ、切捨て、四捨五入など、任意の方法が選択できます。
▶家賃のように、請求書がない取引は?
取引の都度、請求書などの書類が発行されない取引(毎月引き落としの取引など)の場合は、契約書にインボイスの記載事項が書かれていることが求められます。
既存の取引については、契約書を確認し、書かれていない場合は、契約書を再締結したり、覚書を交わしたりなどの方法で、記載事項を補ってください。
【売手】【買手】インボイス発行後・受領後 の社内での流れを決める
インボイスの取扱いについて、社内における流れも整理しておきましょう。
○整理のポイント~売手編~
  1. 誰が、いつ、どの書類を発行するのか?
  2. 誰が、いつ、どうやって取引先に渡すのか?
  3. 写しはどう保管し、誰が管理するのか?
○整理のポイント~買手編~
  1. 誰が、いつ、どの書類を、どのような形式で受領するのか?
  2. どの経路で経理担当者に届くのか?
  3. どう保管し、誰が管理するのか?
▶納品書などをインボイスとした場合
例えば納品書の管理を購買担当者が行っている場合は、現状の流れのままでは経理担当者に書類が行き渡らないことも考えられます。
このように請求書以外の書類をインボイスとした場合は、確実に経理担当者に到達するよう、社内ルールを調整する必要があります。
▶インボイスに修正が生じた場合
受け取ったインボイスの内容に誤りがあった場合、買手側で修正することはできません。この場合、売手側で修正したインボイスを発行してもらうことになります。
そのため、記載内容に修正が生じた場合の対応についても、予めルールを定めておくとよいでしょう。誰がどうやって、修正インボイスの発行依頼をするのか、ご検討ください。
【売手】【買手】インボイスの保存方法を決める
インボイスは、7年間の保存義務があります。売手は写しを、買手はインボイスそのも の(複数の書類にまたがる場合は、そのすべて)を保存します。
○売手が保存するインボイスの写しの範囲
発行した書類そのものの複写である必要はありません。レジのジャーナルや複数のインボイスに係る一覧表、明細表など、そのインボイスの記載事項が確認できる程度の記載がされているものも「写し」に含まれます。
また、書面発行したインボイスの電子データ保存も、写しの保存として認められます。
▶電子データは電子帳簿保存法にも注意
電子データで保存する場合には、タイムスタンプ付与などの改ざん防止措置や、日付などで検索できるシステムの整備など、電子帳簿保存法への対応にもご留意ください。
なお、2024年以降は、原則、すべての事業者に対し、電子データで送付・受領した請求書等の電子保存が義務付けられます。
ここまでは、取引先と調整しながら進める準備について、おおまかな流れを確認しました。
次からは、経理担当者を中心に、社内で決めておきたいことを整理します。

経費にもインボイスは必要?

ここでは【買手】の立場から、「経費」に注目します。
令和5年10月からは、仕入だけでなく、支払った経費についても、仕入税額控除の適用にインボイスの保存が求められます。 【買手】経費をどう管理するのか、ルールを作る
会議や接待で支払った飲食代、タクシー代、配送費用、消耗品の購入代など、事業活 動には様々な経費の支払いが発生します。
これらの経費についても、金額に関係なく、原則インボイスが必要です。インボイスがなければ、原則、仕入税額控除を適用することができません。役員や営業、総務など、経費支出に関わる担当者も含めた社内ルールを作成し、インボイスがスムーズに回収できるよう準備しましょう。
受け取った領収書やレシート、請求書などが、インボイスの記載事項を満たしているか否かのチェックも必要です。
また、以下のような記載事項の例外としての「簡易インボイス」や、インボイスの発行が免除等される場合もあるため注意します。 簡易インボイスの場合
顧客が不特定多数である一定の事業者は、インボイスに代えて、簡易インボイス※1を発行できます。
簡易インボイスも、仕入税額控除に必要となるインボイスに含まれますので、通常のインボイスと同様に保存します。
○簡易インボイスを発行できる事業者
  • 小売業
  • 写真業
  • タクシー業
  • 飲食店業
  • 旅行業
  • 駐車場業(不特定多数対象)
  • その他これらの事業に準ずる事業で不特定多数の者に資産譲渡等を行う事業


※1 簡易インボイスの記載事項は次のとおりです。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)
  5. 税率ごとに区分した消費税額等又は適用税率
インボイスが免除されている場合
以下の場合はインボイスの発行義務が免除されていますので、帳簿の保存のみで仕入税額控除が適用できます。
○インボイスの発行が免除される一例
  • バス、電車、船舶など、公共交通機関による3万円未満の旅客の運送
  • 自動販売機における3万円未満の販売
  • 郵便切手を貼って郵便ポストに差し出された場合の、郵便サービス
インボイスの回収・保存が難しい経費
インボイスの保存が難しく、保存義務が免除されているケースもあります。こちらも帳簿保存のみで仕入税額控除が適用できます。
○インボイスの保存が免除される一例
  • 入場券等(インボイスの記載事項を満たす)で、使用の際に回収されるもの
  • 従業員に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当など
なお、支払い先が適格請求書発行事業者でない場合(個人や免税事業者である場合な ど)は、インボイスの発行を依頼できず、原則、仕入税額控除が適用できません※2。
特に交際費などで生じやすい仕入税額控除ができない支払について、ご注意ください。

※2 令和11年9月末までは、経過措置により免税事業者等からの仕入の一定割合を控除できます。

消費税額の計算はどうなる?

インボイス制度の開始に伴い、消費税額の計算方法2 種類になります。どちらを選択できるのか、組み合わせに制限があります。【売手】【買手】の両方の立場から、要検討事項です。 【売手】【買手】消費税の税額計算の方法を決める
消費税は、売上に係る消費税額等(以下、売上税額)から、仕入に係る消費税額等(以 下、仕入税額)を差し引いた金額を納付します。つまり、売手として売上税額の、買手として仕入税額の計算が必要となります。
令和5年10月1日より、売上税額・仕入税額の算出方法は次の2種類になります。 (1)割戻し計算
その年(年度)の売上・仕入の合計額(税込)に税率をかけて計算します。
○計算方法
売上・仕入の合計額(税込)×10/110※

※軽減税率対象の場合 8/108
(2)積上げ計算
インボイスに記載された消費税額等を積み上げて計算します。税抜経理方式を採用している場合に選択できる計算方法です。 選択できるの?
原則は、売上税額は割戻し計算、仕入税額は積上げ計算です。仕入税額については、割戻し計算を選択することもできます。
適格請求書発行事業者の場合、仕入税額で積上げ計算を選択している場合に限り、売上税額についても積上げ計算を選択することができます。
逆をいえば、売上税額の計算方法を積上げ計算とした場合には、仕入税額の計算方法も積上げ計算のみとなります。
▶計算方法は併用できる?
●売上税額の計算
取引先ごと又は事業ごとに計算方法を選択できるため、併用が可能です。

●仕入税額の計算
併用できません。売上税額で併用している場合は、積上げ計算を適用したとみなされ、仕入税額の選択肢は積上げ計算のみとなります。割戻し計算を選ぶことはできません。
▶簡易インボイスを発行している場合
簡易インボイスを発行する事業者で、「適用税率」のみを記載している場合は、消費税額等の記載がないため、積上げ計算ができません。割戻し計算により売上税額を計算することとなります。ご留意ください。
ここまでで、決めておきたいことが一通り整理できました。
それでは最後に、決めたことをスムーズに運用するために準備しておきたいことなどをみていきましょう。

その他に準備すべきことは?

インボイス制度を円滑に運用するために不可欠なのが、社内システムと社員の理解です。
そして最後に、取引先と良好な関係を継続するために欠かせない大切な視点について解説します。 【売手】【買手】必要なシステムの改修
インボイス制度導入に伴い、請求書等の書式や受け渡しの流れ、消費税額の計算方法が変わる場合には、これらに係るシステムの改修が必要となります。
システムが取引先と連動している場合には、取引先との調整も要します。
▶システム改修に活用できる補助金
●IT 導入補助金 デジタル化基盤導入類型
インボイス制度への対応を見据え、会計・受発注・決済・ECソフトの導入や、PC・タブレット・レジ・券売機などの導入を支援

https://www.it-hojo.jp/
【売手】【買手】社内への周知・徹底
これまでの解説のとおり、インボイス制度は経理だけでなく、役員、購買や営業、総務 など様々な部門や人が関わります。
関係各所の理解と協力が得られるよう、策定した社内ルールの周知は早めに行うとよいでしょう。
【買手】社内への周知・徹底
免税事業者からの仕入は納税額が膨らむことが懸念されます。交渉を予定されている場 合は、次の点にご配慮ください。
  • 適格請求書発行事業者となるよう強要することはできません。
  • 税額相当額の値引きを強いることも、独占禁止法等の観点からお控えください。
なお、免税事業者が適格請求書発行事業者に登録した場合、次の補助金があります。 ご不明な点やご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。
▶脱免税事業者を支援する補助金
●小規模事業者持続化補助金 インボイス枠
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