しがそうカラム

【しがそうコラム特別号】インボイス制度の概要について~免税事業者版~
一人親方や大家さん、フリーランスの皆さま必見です!

令和5年10月からインボイス制度が始まります。
ここでは消費税の申告をしなくてもよい事業者(以下、免税事業者)の目線で、インボイス制度がどのような制度で、どう影響するのかなど、概要をまとめました。
事業者が取引先となる一人親方や大家さん、フリーランスの皆さま、必見です!

そもそも消費税の免税事業者って…?

消費税の免税事業者とは、消費税の納税を免除されている事業者、すなわち納税義務のない事業者です。
免税事業者になるかどうかは、基準期間の課税売上高により判定します。 ● 基準期間とは?

最も基本的なものが「2期前の売上が1,000万円を超えるかどうか」です。
個人事業主であれば2年前の1月から12月の売上、法人であれば2期前の売上をベースに判断します。この2期前の期間のことを「基準期間」といいます。
まずはこの基準期間の売上をベースに消費税の課税事業者に該当するかどうかを判断します。


● 特定期間に注意!

基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば納税義務は免除になりません。
特定期間とは、次のとおりです。

・個人事業主の場合・・・その年の前年の1月1日から6月30日までの6カ月間
・法人の場合・・・その事業年度の前事業年度開始日以後6カ月間


● 新規開業の場合は?

新規開業から2年間は基準期間の課税売上高がないため、原則としてその課税期間の納税義務は免除されます。
ただし設立2年目については、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務が生じます。
なお資本金1,000万円以上の法人に関しては納税義務は免除されないので、設立1期目から消費税を納めなければなりません。 ● 免税事業者と課税事業者の判定
課税事業者になる要件は個人事業主の場合2ステップ、法人の場合は3ステップあります。やや複雑なので、チャートで確認しておきましょう。

インボイス制度、実は免税事業者こそ影響大!?

消費税の制度だから無関係、と思ったら大間違い。インボイス制度は免税事業者にも深刻な影響を及ぼします。
知らずに放置すると取引先を失うリスクも!? まずは制度の理解からスタートです。 ● 免税事業者はインボイスが発行できない
インボイスとは「適格請求書」のこと。インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」で、令和5年10月1日から始まります。
始まると、基本的に消費税の申告をする事業者(以下、課税事業者)にとって適格請求書は欠かせない書類となるため、取引先に対して適格請求書の発行を求めるようになります。
ただしこの適格請求書を発行できるのは、税務署の審査・登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られています。
そして困ったことに、免税事業者のままでは適格請求書発行事業者になることができないのです。
今後、適格請求書のない取引は敬遠されやすくなります。また、制度開始に伴い、値引き交渉を受けることも考えられます。
ゆえに、免税事業者も無関係ではない「押さえておくべき」重要な制度なのです。

国税庁特設サイト「特集 インボイス制度」

特集 インボイス制度 (nta.go.jp)

適格請求書が発行できないと、どう影響するの?

適格請求書が発行できないことが買手(課税事業者)にどう影響するのでしょうか?
まずは消費税の課税の仕組みを解説しながら、免税事業者が売手であるときの影響を確認していきましょう。
● 大切なのは「仕入税額控除」
課税事業者は原則、販売等により預かった消費税額から、仕入等により支払った消費税額を差し引いて(仕入税額控除)、消費税額を求めます。
このような計算のしかたを「一般課税」といいます。
この消費税額と、消費税額から計算した地方消費税額の合計額が納付税額となります。
つまり、この仕入税額控除を適用できるか否かで納付税額が大きく異なります。
● 適格請求書の有無で、どう違ってくる?
インボイス制度の下で仕入税額控除を適用するには、原則「適格請求書等の保存」が求められます。
そのため、仕入税額控除を適用したい課税事業者にとって、売手から適格請求書の交付を受けられるかどうかが重要となります。
しかし免税事業者が売手の場合には、適格請求書の交付を受けることができません。

適格請求書の交付を受けられないことがどう影響するのか、買手である課税事業者の立場からみてみましょう。 ここでは例として、外注先である免税事業者へ外注費として660万円を支払った場合を例に、一般課税による仕入税額控除の適用がどうなるのかを見てみます。
● 現行は、仕入税額控除可能
現行は、仕入税額控除の適用に関して、売手が課税事業者であることを要件としていません。
売手が免税事業者や一般の消費者等であっても、その支払が要件を満たす限り、支払った金額は消費税額等込みの金額とされ、仕入税額控除を適用することができます。
事例では、免税事業者である外注先へ支払った外注費660万円は、消費税額等が60万円分含まれているものとして仕入税額控除を適用し、600万円がコストとなります。
● 現行は、仕入税額控除可能
一方で、インボイス制度開始後は、免税事業者である外注先から適格請求書の交付が受けられないため、経過措置期間を除き、原則、仕入税額控除をすることがで きません。
事例の場合、660万円は全額買手のコストとなります。
● 「消費税分が損」との意識が足かせに
例では同じ内容の取引でも、制度開始後は実質60万円のコスト増(納付税額の増加)となりました。
このような取引が多くあるほど買手の負担は重くのしかかり、免税事業者との取引を躊躇させる要因にもなりかねません。売手である免税事業者に対して適格請求書発行事業者となるよう求めたり、値下げを求めたりすることも想定されます。

「適格請求書発行事業者になる」ということは、「課税事業者になる」ということ。
今後どうするかの判断ポイントを、次で解説します。

課税事業者になるべき? それとも免税事業者のままでよい?

適格請求書発行事業者となるために課税事業者となるか…
それとも免税事業者のままでいるのか…

どちらの道を取るべきか。
判断に迷う経営者様や個人事業主様も多いと思います。
迷ったときにどう判断したらよいのか、ポイントを解説していきます。
● 免税事業者でいることのメリット
基本的に基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、その課税期間の消費 税の納税義務が免除され、消費税の申告を行う必要はありません。これを「免税事業者」といいます。
他方1,000万円を超えると、原則として消費税の納税義務者となり、消費税の申告を行 います。これを「課税事業者」といいます。

免税事業者である間、消費税の申告や納税は必要ありません。経理処理が楽で、申告の手間や納税のための資金繰りの心配がないことも、メリットといえるでしょう。
免税事業者としてこのメリットを享受し続けるか、それとも課税事業者となった上で、適格請求書発行事業者となることで、現状の取引を維持するか、この2つの道を比較検討することになります。
判断の鍵となるのは「中心的なお客様は誰か?」です。具体的にみていきましょう。 ● 中心的なお客様 = 一般消費者の場合
一般消費者を対象に商品の販売やサービスの提供をしている場合は、インボイス制度の影響をほとんど受けません。
お客様が適格請求書等を必要とする機会も少ないので、免税事業者のままでも、さほど支障はないと考えられま す。

ただし例外もあります。
接待利用の多い飲食店や、業務で使用されることの多いタクシー等においては、支払者は利用された個人ではなく、社内精算等を通じ事業者となる場合が多くあります。
これが課税事業者となれば、適格請求書等の発行を求められることもあるでしょう。
この場合は、適格請求書発行事業者に登録し発行体制を整えることで、顧客離れを防ぐことができます。
● 中心的なお客様 = 免税事業者の場合
この場合も、免税事業者のままでいても影響はほとんど受けません。

しかしインボイス制度開始や事業拡大をきっかけに、これまで免税事業者であったお客様が課税事業者になった場合には、対応を迫られるかもしれません。
適格請求書等の発行ができないことが、その後の取引継続の足かせとなる可能性もあります。
● 中心的なお客様 = 課税事業者の場合
最後に、中心的なお客様や重要なお客様が課税事業者である場合です。
インボイス制度の影響を受けやすく、売上を左右する重要な要素となる場合には、対策が必要です。
課税事業者は、適格請求書等がないと原則として一般課税では仕入税額控除ができ ず、納付税額が膨らみます。
そのため、免税事業者に適格請求書発行事業者となるよう促したり、あるいは値下げを要求したり、場合によっては免税事業者との取引を敬遠したり、取引を停止したりする事業者も出てくると懸念されます。
事業の継続・拡大を考えると、適格請求書発行事業者に登録することも一考かもしれません。
ただし、適格請求書発行事業者に登録すると課税事業者となり、経理上の手間が増える他、消費税の申告納税義務が生じます。
フローチャートをご用意いたしましたのでご参考の上、メリットとデメリットを比較し、慎重にご判断ください。
● 6年間の経過措置も利用してご検討を
ただし、免税事業者や一般の消費者等(以下、免税事業者等)からの課税仕入れについては、経過措置が設けられています。
下表のように、令和11年9月末までの6年間は、課税事業者が免税事業者等から課税仕入れを行った場合でも、一定の割合について仕入税額控除をすることができます。
特に令和8年9月末までは80%が控除できますので、課税事業者となるべきか判断に迷われた場合には、売上やお客様の状況等を様子見しながら、この頃までにじっくり検討されるのも一法です。
インボイス制度についてもっと詳しく話を聞きたい、課税業者になるにはどうしたらいいかわからない…などお悩みの方へ

弊所ではお客様の事業の会計処理や税務申告はもちろん、経営に関するさまざまな課題もサポートいたします。
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適格請求書って何? 発行事業者の留意点

適格請求書発行事業者、ひいては課税事業者になると、消費税の申告の他にもさまざまな手間が生じます。
ここでは、まず買手側において保存が必要となる請求書等を確認した上で、適格請求書発行事業者となったときに生ずる義務と発行する適格請求書の記載事項を確認していきます。
● 買手側が保存必須となる請求書等
買手として仕入税額控除を適用するためには原則、一定の事項を記載した帳簿ととも に、一定の取引を除き、次の請求書等の保存が必要です(電磁的記録での保存も可)。

  1. 適格請求書又は適格簡易請求書
  2. 仕入明細書等(適格請求書の記載事項が記載され、相手方の確認を受けたもの)
  3. 卸売市場において委託を受けて卸売の業務として行われる生鮮食料品等の譲渡、及び農業協同組合等が委託を受けて行う農林水産物の譲渡について、受託者から交付を受ける一定の書類


なお、簡易課税制度により消費税額を計算している場合は、請求書等の保存要件はありません。 ● 適格請求書発行事業者としての義務
適格請求書発行事業者となった場合には、「交付」と「保存」が義務付けられます。
この適格請求書等は、書面での交付に代えて、電磁的記録で提供することができます。
① 交付の義務
  • 免除される取引を除き、原則、買手(課税事業者)の求めに応じ、適格請求書を交付する義務があります。軽減税率対象品目の販売がない場合でも、この義務は生じます。
  • 返品や値引き等、売上に係る対価の返還を行う場合には「適格返還請求書」を、交付した適格請求書に誤りがあった場合には「修正した適格請求書」を交付します(これらの請求書を総称して、以下、適格請求書等)。

② 保存の義務
  • ①で交付した適格請求書等について、写しを保存する義務があります。
● 消費税額を正確に伝えるための請求書
現在は、8%と10%の2種類の消費税率が存在します。
どの商品・サービスにどの税率が適用され、消費税額等はいくらなのか、正確に売手から買手に伝える手段としての完成形が「適格請求書」です。
軽減税率制度の開始と同時に「区分記載請求書」の交付も開始されていますので、これには対応されていると思いますが、適格請求書では、さらに次の③④の事項も記載が求められます。
● 不特定多数に発行する簡易な請求書
小売や飲食店、タクシー等、不特定多数のお客様に対して行う取引では、適格請求書に代えて、右のような「適格簡易請求書」の交付も認められています。
適格請求書との記載事項の違いは、以下のとおりです。

  1. お客様の氏名又は名称を省略できます
  2. 適用税率又は税率ごとに区分した消費税額 等のいずれかを記載すればよいこととなっています(右図のように、両方記載することも可)

適格請求書発行事業者となった場合には、交付や保存を確実に行えるよう、請求書システムの改修や書式 等の準備を進め、制度について従業員等の理解を深めておくことが大切です。

登録申請する場合のスケジュールと手続き

適格請求書発行事業者になるには登録が必要です。
インボイス制度が始まる令和5年10月1日から適格請求書発行事業者になるには、原則、令和5年3月31日までに申請手続きをします。
● 課税事業者になれば登録可能
免税事業者が適格請求書発行事業者の申請をするには、課税事業者となるための届出を行う必要があります。
ただし、今なら経過措置により、適格請求書発行事業者に登録するだけで、自動的に課税事業者になります。
適格請求書発行事業者は、課税事業者として消費税の申告納税義務があります。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下になっても、免税事業者にはなりません。 ● 申請後、審査を経て登録されます
納税地の所轄税務署長へ登録申請書を提出すると、税務署による審査が行われます。
審査通過後、「登録通知書」で登録番号(適格請求書に記載する番号)の通知を受けます。
一度登録されると、自ら登録の取消のための届出書を提出するか、税務署から登録 を取り消されない限り、有効です。

インボイス制度開始時点で適格請求書発行事業者であるためには、原則、令和5年3月31日までに登録申請書を提出します。
なお、登録を受けた事業者の情報は、インターネットで公開されます。
取引先が適格請求書発行事業者であるかどうかも、ここで確認できます。公開情報は次のとおりです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名又は名称
  • 登録番号、登録年月日(取消、失効年月日)
  • 法人の場合、本店又は主たる事業所の所在地
  • 上記の他、事業者から公表の申出があった場合には、以下の情報
    →個人事業者:主たる屋号、主たる事務所の所在地
    →人格のない社団等:本店又は主たる事務所の所在地
ご不明な点やご相談は、お気軽に当事務所までお問い合わせください。

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